「勝ちすぎた監督」 中村 計著
新聞の書評で上記の本が紹介されていた。市立図書館に「リクエスト制度」があることを知り、リクエストして購入してもらった。2004年・2005年と夏の甲子園大会を連覇して2006年には決勝戦に進み「ハンカチ王子」斎藤佑樹の早稲田実業に敗れて準優勝した駒澤大学苫小牧高校の事を(特に監督の香田誉士史について書かれている)描いた本である。
私も北海道の学校が甲子園で優勝することの重みは凄いことだと思っていたのだが、本当に当時の反響は、特に北海道では凄まじいものがあり、例えば新聞は翌日まで輪転機を回しても間に合わないほど売り切れ、決勝戦の様子は札幌競馬場のターフビジョンが甲子園中継に切り替わり、北海道を走る特急オホーツクの車内アナウンスで快挙を伝え、車内は歓声と拍手に包まれたのだそうだ。雪国の甲子園の活躍は勿論、優勝など遠い事だと思われていた(優勝旗の白河の関越えは東北・北海道の悲願であった。)のだから、本当に快挙だったのだ。しかも連覇を果たすのだ。
沢山の工夫された練習も紹介されていて、面白かったのだが、中でも「想定練習」というのが凄いと思った。ボールを使わずに守備と攻撃に分かれて、打者役の選手は「レフトに大きな当たり」と言いながら走り出す。すると3塁にいたランナー役の選手はタッチアップの準備をし、一塁ランナーは1、2塁の間のハーフウェイで立ち止まる・・・・・。さらにバッター役の選手が「レフトがファンブル(エラー)」と言ったら、更にもう一つ塁を進める準備をする・・・・といった具合。息があってくると、「レフトフライ」と言うと、守備側も攻撃側も(本当は打球は飛んでないにもかかわらず)打球を見るために動かす首の動きまで揃うようになるのだそうだ。この動きがアタフタする選手は実際にボールがある場合も正しい動きが出来ないのだそうだ。
また大リーグに行った田中将大選手はキャッチャーとして駒澤大学苫小牧高校に入学、最初はピッチャーもできるキャッチャーであったらしい。監督は「強肩で、おそらくキャッチャーとしてもプロ野球に行ける力があった。」という。ハンカチ王子、斎藤佑樹との投げ合いについて「観客全員が早稲田の優勝を望んでいたような試合だった。」と、田中投手は振り返っている。
また、優勝が重なり、甲子園に出場することが当たり前にようになると、教職員や後援会もそんなに甲子園に行くことを望まなくなり(確かに甲子園に行くことになると、夏休みが無くなることになる職種もあるのだ。)監督はだんだんと居場所がなくなってくる。そして最後には北海道を離れることになってしまうのだ。
確かに、例えば横浜高校の渡邉監督は知っていても横浜高校の校長の名前は誰も知らない。しかし監督と校長、教頭、後援会・・・・人と人のドラマはあるのだ。久しぶりにグングン読み進んでしまう楽しい本だった。
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